2011/12/20

ソウルブラザー伝~沢内アキラ

北海道いい旅研究室12号に載った、マスター前田が書いたエッセイの2話目です。

前号で書いた清志郎はもういなくなってしましました。

日本で初めて本物ロック歌手は正直に歌を書いて歌って、去っていったのです。

この国の音楽界は大甘なところで、聴き手をなめた者だけが、成功していきます。そんなことは大切なことではないのですが、事実ではあります。

正直に歌うとどんどん一人になってゆく、しかし寂しく思いながらも、またおせっかいな歌を書いていった男、忌野清志郎。

ぼくはこの人はごく普通に良心に従って、かっこいい生き方を通した人だと思う。

日本で歌の上手い人が5人いるとすると、間違いなくこの人はその1人に入る。もう1人はここ札幌の「ベーカーショップブギー」というソウルバンドの沢内アキラさんで、その他3人はぼくがまだ出会っていない、どこかにいるはずの歌い手です。

清志郎がまだRCの頃、月寒グリーンドーム(現、北翔クロテック月寒ドーム)で、ベーカーと共演したことがありました。その時、清志郎はベーカーショップブギーの演奏の後、楽屋でアキラさんの手をにぎったまま離してくれなかったそうです。

一方アキラさんは清志郎のことをロックンロールの兄ちゃんくらいに思っていて、なぜ自分に向かって「ソウルブラザー」と言っているのか理解していなかったのでした。

清志郎の死後、次々に清志郎(RC)の特集番組が放送され、彼は日本のソウルバンドを目指していたことが判明しました。(フォーク時代から「ガッチャガッチャ」と叫んでいたのは本人はソウルを歌っていたつもりだったとは)

そこで月寒グリーンドームの話が納得できたのです。ベーカーと言えばソウルミュージック発祥の地アメリカ本国にさえ存在しないような「正しいソウルバンド」で、特にオーティスレディングをやらせたら本物の次にいい演奏をするバンドです。

清志郎はこの日本のはずれの月寒グリーンドームで、もういないはずのオーティスに出会ったのだから、感激で言葉にならなかったのでしょう。

一方アキラさんは清志郎のことなどまったく気にならなかった様で、最近ようやく「いやぁ、清志郎のこと、死んでから何か気になりだして、暮れのブルース収穫祭で『雨上がりの夜空に』を初めて歌ったよ」と言っている始末です。

清志郎が生きていたらいつかきっと実現したRCとベーカーの二回目の共演ライブは、もう無理です。でも清志郎の歌がバトンのごとくベーカーのアキラさんに渡り、また新しく甦ることを考えると、あの日、月寒グリーンドームでアキラさんが渡されたにはバトンだったのかと思ってしましました。

そっけない付き合いに見えるアキラさんと清志郎。でも本物のソウルブラザー!

前田重和

*昨年のブルース収穫祭には、RCのドラマー新井田耕造さんが出演してくれました。

今年の収穫祭は12月25日(日)15:30~開演

出演者 ベーカーショップブギー・久保田陽子&スパシーバーズ・町田謙介・Chihana・スイスギターズ・夢野カブ/武内正陽・TWINCAM`S・小嶋とおるバンド・リバティーシューズ・新谷バンド・THE APOLLOS

場所は恒例 ジャスマックプラザ5Fザナドゥ

料金4000円

2011/12/19

pistolアルバム歌詞解説1

ピストル・ブギー・スーサイドのファーストアルバム「デスペラード」の歌詞の解説を書くきっかけとなったのは、このCDの歌詞と演奏のレベルの高さが、とってもいいのに、アルバムの曲順がちょっと気になっていたことがきっかけです。

私としては、このCDの曲順構成は後半の方に、メロディーいっぱいのいい曲がまとまっている感じがしていた。もっと前の方に聴き手の心をつかむそのメロディアスな曲を持ってきたほうが、CDが売りやすいと考えた。

曲順はヴォーカル・ササジマ君(彼は小学校の頃から「ジョマ」と呼ばれていたそうだ。ミルクではこっそりササジーとよんでいた。この解説では敬意をこめてササジマ君と書く)が、どうやら1人で決めたらしく、メンバーからも私と同じ発想で、早めにメロ曲を入れたほうがいいという意見があったが、ササジマ君はこう言った。

「歌ものは、あんまり早目に入れたくないんだよなあ」と。

この「歌もの」という表現は、彼の中でメロ曲、感情的曲、泣かせ歌の様な、聞く人の心の中にとり入って心をぬすみとるような歌を「歌もの」と言い、ロッカーを自負する彼の中では、あまり前面に打ち出して売り物にすることは、いさぎよくないと判断しているのだと感じた。

そうか、ササジマ君にとって「歌もの」的な歌で客をつかむのは、かっこわるく、はずかしいことなんだ。

その罪悪感がこのCDの前半のインスト曲やノリ曲と、後半のメロ曲のバランスを生み出したのか納得した。

同時に、自分の曲に距離をおいて見ているササジマ君の判断は、理由ある行為なんだと理解した。このアルバムが売れるための構成を意図的にとっていないという事は、作った本人は売れることはあまり大事なことではないと考えているようだ。

ここは大切なところで、今は日本中のインディーズバンドが売れることだけを目的にして、音楽からどんどん離れていく中で、ピストルブギーは音楽をやっている。

音楽のようなものではなく、ヒリヒリとした感性のせめぎ合いの中で、音楽をやっている。

これは誰もマネはできないなあ。

たとえば、アルバム1曲目の「デスペラード」は、いきなりのインストナンバーである。ピストルは、けっして演奏の上手さを売りにしているバンドではないのにである。自作曲をやるのには、ちょうどつり合っているくらいの演奏力なので、いきなりインストから入ってくるには、当然理由がある。

これは、ピストルブギーの歌の世界へのイントロなのだ。

このアルバムは、この後2曲目から、ぎっしりいい曲が並んでいる。このインストは、ワクワクして待つように言っている、これから出てくる数々のメロディーの予告でもある。

ピストルは、ちょっとイキな入りでやってきた。

センス一発だ!

次回につづく (まだまだ歌詞にたどりついていないのです。)

マスター前田

2011/12/01

pistol boogie suicide

評判のピストルのアコースティックライブ!

今度は、「ホールステアーズエスプレッスバー」宮越屋珈琲です。(南3西3成美堂ビルB1)

宮越屋の社長、宮越君も35年前ミルクでアルバイトをしてくれていました。

そんな縁でライブすることに、「ホールステアーズエスプレッスバー」は、月に1,2回はライブをしているそうです。(ジャズが多いらしい)

ピストルのアコースティックは、すごくいいです、生の楽器から出てくる音楽にゾクゾクします。音楽で鳥肌立ちたい人におすすめです。

12月18日(日)オープン19:00スタート19:30

ドリンク付きで¥2500.お問合せ「ホールステアーズエスプレッスバー」011-596-6966、又は「ミルク」011-741-2490まで。