2011/12/19

pistolアルバム歌詞解説1

ピストル・ブギー・スーサイドのファーストアルバム「デスペラード」の歌詞の解説を書くきっかけとなったのは、このCDの歌詞と演奏のレベルの高さが、とってもいいのに、アルバムの曲順がちょっと気になっていたことがきっかけです。

私としては、このCDの曲順構成は後半の方に、メロディーいっぱいのいい曲がまとまっている感じがしていた。もっと前の方に聴き手の心をつかむそのメロディアスな曲を持ってきたほうが、CDが売りやすいと考えた。

曲順はヴォーカル・ササジマ君(彼は小学校の頃から「ジョマ」と呼ばれていたそうだ。ミルクではこっそりササジーとよんでいた。この解説では敬意をこめてササジマ君と書く)が、どうやら1人で決めたらしく、メンバーからも私と同じ発想で、早めにメロ曲を入れたほうがいいという意見があったが、ササジマ君はこう言った。

「歌ものは、あんまり早目に入れたくないんだよなあ」と。

この「歌もの」という表現は、彼の中でメロ曲、感情的曲、泣かせ歌の様な、聞く人の心の中にとり入って心をぬすみとるような歌を「歌もの」と言い、ロッカーを自負する彼の中では、あまり前面に打ち出して売り物にすることは、いさぎよくないと判断しているのだと感じた。

そうか、ササジマ君にとって「歌もの」的な歌で客をつかむのは、かっこわるく、はずかしいことなんだ。

その罪悪感がこのCDの前半のインスト曲やノリ曲と、後半のメロ曲のバランスを生み出したのか納得した。

同時に、自分の曲に距離をおいて見ているササジマ君の判断は、理由ある行為なんだと理解した。このアルバムが売れるための構成を意図的にとっていないという事は、作った本人は売れることはあまり大事なことではないと考えているようだ。

ここは大切なところで、今は日本中のインディーズバンドが売れることだけを目的にして、音楽からどんどん離れていく中で、ピストルブギーは音楽をやっている。

音楽のようなものではなく、ヒリヒリとした感性のせめぎ合いの中で、音楽をやっている。

これは誰もマネはできないなあ。

たとえば、アルバム1曲目の「デスペラード」は、いきなりのインストナンバーである。ピストルは、けっして演奏の上手さを売りにしているバンドではないのにである。自作曲をやるのには、ちょうどつり合っているくらいの演奏力なので、いきなりインストから入ってくるには、当然理由がある。

これは、ピストルブギーの歌の世界へのイントロなのだ。

このアルバムは、この後2曲目から、ぎっしりいい曲が並んでいる。このインストは、ワクワクして待つように言っている、これから出てくる数々のメロディーの予告でもある。

ピストルは、ちょっとイキな入りでやってきた。

センス一発だ!

次回につづく (まだまだ歌詞にたどりついていないのです。)

マスター前田